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“米国で起業し成功する方法”その13の雇用管理―実務1では、、連邦法と州法で構成された複雑な雇用法、連邦法と州法の適用基準、カリフォルニア州の雇用法、雇用法の履行を監督する行政機関、雇用管理―実務2では、採用時において非常に重要なポイントである従業員の形態と区分、独立請負人の性格と長所、短所、独立請負人に区分する判断基準、雇用管理の実務3では、従業員の区分である、エクゼンプトとノンエクゼンプト, 実務4では、採用時の実務として、募集から採用に至るまでの過程と注意点について、実務5では、採用後に重要となる従業員のベネフィットについて、実務6では、米国の雇用法で最も重要な法律である雇用差別法についての概要を話しました。今回は雇用差別の一つの形態であるセクシャルハラスメントについて解説します。
セクシャルハラスメント(以下セクハラ)とは、米国では、1964年に制定された雇用差別法の基本法であるタイトルVll (Civil Right Act Title Vll 1964 )の性差別を禁じた法律が基本法となっていますが、セクシャルハラスメントが現在のように社会で認知されるようになったのは、1986年に連邦最高裁判所が、ビンソンさんの裁判で、セクハラ行為がタイトルVllに違反するという判決を出したのが始まりです。さらには、連邦最高裁判所のトーマスが元部下のアニタ ヒルにセクハラを告発される公聴会がテレビ中継される騒ぎになり米国社会での関心が高まりました。また、記憶に新しい有名人のセクハラ事件としては、クリントン大統領が州知事時代の女性部下により訴訟を起こされたり、モニカ嬢との情事は米国社会を揺さぶる大事件となりました。日本では、1986年に起きた西船橋駅ホーム転落事件で被告の女性を支援する団体がセクハラという言葉を使い出したのが始まりで、その後、1989年に福岡県の出版会社を舞台にしたセクハラの裁判で普遍的に認知されるようになりました。
セクハラとは、一般的な定義では、職場や学校などで、“相手の意思に反して不快や不安な状態に追い込む性的な言葉や行為”を指し、職場に限らず一定の集団内で、性的価値観により、快不快の評価が分かれるような行動を行ったり、そのような環境を作り出すことを指しています。法的には、雇用差別法を管轄するEEOC(Equal Employment Opportunity Commissioner )によると、二つのタイプに分けられます。一つは、対価型セクハラ(Quid pro que)と呼ばれ、雇用に伴う採用や昇進の条件として、性的行為を要求したり、不快な性的行動をとったり、交際を強要したり、することです。このタイプは、上司から部下への行為が一般的で、セクハラ訴訟の多くがこのタイプのものです。このタイプのセクハラの問題は、セクハラなのかプライベートな付き合いなのかの判断がつきかねることです。職場内の恋愛なのか、上司から部下へのハラスメントなのかは、当事者しか分からないことが多々あります。また、交際中はプライベートな関係であっても、交際が中断されたり、部下が会社を解雇されたりした場合は、その交際がハラスメントであったと主張しクレームを起こす従業員がいる事も事実です。
二つ目のタイプは、環境セクハラ(Hostile environment harassment )と呼ばれるもので、不快な性的行動や言葉などにより性的に不快な職場環境を作ることです。このタイプは、上司から部下とは限らず、職場のだれもが加害者、被害者になる可能性があります。具体的には、ヌードポスターや水着ポスターなど、人によっては不快を起こすものの掲示、性的な冗談、容姿、身体などについての会話、性的魅力をアピールするような服装や振る舞いを要求すること、性的なポスターや写真などを掛けたり、体などをじろじろと凝視することがこのタイプのセクハラとなります。このタイプのセクハラの問題は、人によって認識が違うことです。ある人には、単なる冗談でも他の人には不快に感じることが多々あります。このような認識の違いについては、裁判所では、一般人の標準(Reasonable person standard)を判断の基準にしていますが、明確な標準はありませんので性に関するような言動は避けるのがセクハラ予防の大原則です。
対価型セクハラの事例として、最近日系社会を震撼させた北米トヨタ社のセクハラ事件を紹介します。訴状によると、このケースは、小林さやかさんという42歳の日本人の秘書が上司である日本人の社長からセクハラを受けたとしてニューヨークの裁判所に1億9千万ドル(約200臆円)という莫大な賠償額で提訴しました。このケースは小林さんが上司である社長の大高英明さんより出張への同行や出張先での同宿、ホテルでの性的行為の強要などのセクハラ行為を受けたとして会社を提訴しました。結果は示談で終わったためにいくらの賠償額で終わったかは不明ですが、大高さんは、トヨタ自動車を退職しましたので何らかの過失はあったものと思われます。驚かされるのは、その高額な訴訟額です。米国は日本のように訴訟額に応じて収入印紙税を払うような制度がないことと、日本の司法制度にはない陪審員制度と懲罰的賠償制度が高額の賠償額となる所以ですが、このケースの注目すべきな点は、小林さんが、会社の人事課にセクハラの事実を報告したにも拘らず、会社側は、当事者同士で解決するように促し、セクハラを止めるような行動を取らなかったことが会社の責任を大きくし、高額の訴訟額となりました。
次に環境型セクハラの事例として、1996年に起こった米国三菱自動車製造のケースを紹介します。このケースは、工場内の女子トイレ内の性的な落書き、女子従業員に対する男子従業員の性的な言葉などの事象により不快な職場環境を与え、会社はそれを放置したという理由で、EEOCに集団訴訟を提訴されました。日米を騒がす大事件になり政治的な問題にまで発展しました。結果は、3400万ドル(約35臆円)でEEOCと和解しました。このケースでも、訴訟の争点は、会社側がハラスメントの事実を知っていたかどうか、ハラスメントを止める努力をしたか、などの会社側の対応姿勢が問題となりました。前述のトヨタの事例でもそうですが、会社側の対応姿勢がハラスメントのクレームには大きな争点となります。ハラスメントの事実を知った場合は、タイムリーに調査を行い、加害者を懲戒処分にするなどの適切な処置を講じることが賠償額を抑える重要な要素となります。
上司から部下への対価型セクハラ、従業員間の不快環境型セクハラのどちらも雇用者に責任と賠償が求められますが、連邦裁判所も州裁判所も無過失責任であるとする判決は出していませんので、雇用者がそのセクハラに関して無過失であることを証明すれば雇用者の債務は免れることになります。その証明とは、セクハラ防止のために最大限の努力をした、というような事実です。これらには、従業員教育の実施、ポリシーの作成、迅速なクレーム処理、適切な懲戒処置、有効な再発防止策の作成などが有効となります。
参考文献:Employment Law-Case and Material(Foundation Press Inc) Labor Law Digest(Cal Chamber of Commerce), EEOC Home page, Labor Department Home page
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